資金調達 ~①調達すべき額~
2021.06.17

歯科医院開業における、資金調達について。具体的にどれくらいのお金が必要か、またそれをどのような方法で準備すればいいのか。銀行の融資に過度に期待するのは禁物です。
歯科医院の開業は最低5000万円~
テナント開業の場合、つまりすでにある建物を借りて開業する場合には、5000万円がひとつの目安となります。対して、戸建て開業ならば、1億円は見ておいた方がいいでしょう。
もっとも安価に済むのは、親族が経営している歯科医院を継承するケースです。この際にはお互いの決定で額がいくらと決め(無償ということもありえます)、自らが院長となり、さらに親族に継承して存続させられるほどには集患にも成功しているということなので、プロモーション費用などにお金が出ていくこともありません。
とはいえ、既存の歯科医院の継承という場合でも、その機にもろもろの設備を最新化し、外観・内装などもリフレッシュする場合には、むろん、そのための費用がかかってきます。
自己資金は1000万円が基準
歯科医院を始めるために必要な額は5000万円~1億円程度ですが、これくらいの額をいきなりまとめて用意できる方は少数でしょう。多かれ少なかれ、銀行から融資を受けることになります。
そしてそのために必要とされるのが、およそ1000万円というポケットマネー、自己資金です。1000万円の自己資金があれば、銀行も事業計画書を信頼し、開業に過不足のない額を融資してくれます。
銀行はお金を貸す立場です。その人がどのような計画性・ビジョンを持って資金を貯金してきたかを必ず確認します。もっと簡単に言ってしまえば、「返せる見込みのない人にはお金を貸さない」のです。そのような信用の面からいって、1000万円という自己資金は十分に心証をよくします。それが地銀や信用金庫への毎月の積み立てであった場合には、お金を預けている金融機関から、より融資を受けやすくなります。
しかしこの1000万円というお金は、開業した後、運転資金で出ていくものになります。歯科医院のスタートアップから数ヶ月はもろもろのお金(人を雇うなら人件費ももちろん)がかかってきます。3割負担の保険診療でも、残りの7割部分が国から入ってくるのは約2ヶ月後なので、本当に手持ちのお金と、レジスターのお金だけで家賃や人件費やその他の雑費をやりくりしなければならないのです。
とりあえず融資を受けるため、そして運転資金のために1000万円という額が必要とはなりますが、これは設備購入などの現実的な使途ではなく、あくまで銀行から借り入れするために必要な「信用」を見せる意味のお金であり、また開業してすぐにかかる経費に使うお金です。人件費や光熱費や家賃などの無形のものに、銀行は融資してくれないのでご留意を。
借りられるときに借りるべき、けれど…
融資は受けられるタイミングで受けるべきです。歯科医院の開業にあたっては専門性の高い器材が数多く必要で、電子カルテやオンラインレセプト請求といったシステムの確立も不可欠であり、何かとお金がかかるビジネスではあります。ユニット数にもよりますが、たとえば3ユニット確保しようと思うと、器材代合わせて2000万円以上は必要でしょう。
さらにそこへCTを入れるならば1000万円。最低限の器材だけで3000万円は必要となるので、やはり銀行からの融資は必要です。
しかし、診察のための器材やその他設備、人材を「足して足して」の考え方で開業を考えるのは危険です。それがいつ無用のものとなるかわかりません。マイクロスコープなどは現場経験から離れると、うまく使える歯科医師も限られているでしょう。そういった、いったんは現実的な使途のない器材まで「開業にあたって一式揃えてしまおう」と銀行から融資を受けると、返済に苦しみます。「ひとまず必要のないもの」は除外して、スタートアップがうまくいき、必要が出てくれば、再び融資を受け、買い足しを検討すればよいでしょう。
歯科医院は当今の経営が赤字でもただちに廃業しなければならないビジネスではありません。長期的に見れば、集患に成功し、ゆくゆくプラスに回すことで、その時々の波・難所はしのぐことができます。そのために必要なのが1000万円という自己資金を、なるべく痛めずにそのまま置いておくことです。傍目には順調そうに見える新規の歯科医院でも、運転資金がショートして経営難に陥る例が多いのです。
コンセプトを明確化することで額が抑えられる、かも
現在、コンビニよりも多いといわれる歯科医院。同エリアのライバルとは、なんらかの差別化をはからなければ、集患はうまくいきません。やはり開業にあたってもっとも熟慮したいのはコンセプトでしょう。客層、メインとしたい時間、そしてどのような診療内容で主な売り上げを作るのか。
たとえば一般歯科メインで、自由診療部分にはそこまで注力しないがニーズに応じて最新の詰め物にも対応する。E‐MAXを5万円という価格で出せるルートがあるならば、2ユニットで予約優先制、1ユニットは定期健診でたまに自由診療の被せ物に時間を使う、というスタイルで、スタッフは自分も入れて最低3人~で病院が回せます。「これだけの範囲に限って、ここに注力する」というコンセプトを明確にすれば、開業時に調達するべき額は抑えられ、またその後の動向によって設備を付け足していくという方法が採れるでしょう。
歯科開業の教科書
編集部
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