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歯科医院の設計・施工(歯科医院設計のポイント)

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歯科医院の設計・施工

歯科医院を設計するうえでのポイントについて

1.ゾーニング

ゾーニングとは、歯科医院の各部屋を、用途や機能によって分けることです。
歯科医院のゾーニングは、主に3つに分類できます。
1)患者ゾーン
おもに患者様が利用される空間です。待合室、受付、キッズ コーナー、患者用WCなどから構成されます。
2)患者・医院スタッフ共用ゾーン
歯科医院のメインとなる治療・診療を提供する空間。患者様とスタッフが交わるゾーンであり、具体的には診察室、X 線室やカウンセリングルームなどが挙げられます。
3)医院スタッフゾーン
消毒室や技工室、スタッフルームや院長室があげられ、バックヤードもその1つです。

2.動線について

人や物が行き来する経路を動線と言います。利益UPや運営効率UPにかかわる、非常に需要な要素です。
開業を考えるとき、デザイン性が高く、おしゃれな設計にあこがれる方は多いです。しかしながら、導線を考慮せず、デザイン性を優先するがあまり、業務に無駄な動きが発生したり、患者様に対しても不快な思いをさせてしまう恐れが。あります。
きちんとした動線を確保することで、無駄のない効率的な運営につながります。

各フロアの設計ポイント

1.待合室

受付と待合室は、患者様が来院した際に一番最初に目にする場所であり、いわば歯科医院の「顔」ともいえる場所といっても過言ではありません。受付と待合室で悪い印象を持たれてしまうと、その後に行う診療までも、余計な不安を抱かせてしまう可能性もあります。
もちろん機能面も考えなければなりません。待合室が狭すぎた場合、新患の取りこぼしが発生する可能性も考えられます。逆に待合室を広く設計した場合、診療室に充てるスペースが減る分、収益性が悪くなる可能性があります。しかしながら、コロナウイルス流行により、待合室では患者様同士が密接になることを敬遠される状況になっており、待合室にはある程度の広さ(ソーシャルディスタンス)を確保するという流れになりつつあります。また、空気清浄機やアルコール消毒液、非接触型の体温計など、感染対策の機器を積極的に設置することがもはや当たり前になってきています。


院内を土足にするかスリッパにするかという選択肢があります。 
昨今ではバリアフリー化も進み、土足の歯科医院も多くなっています。
土足の場合、問題点を挙げると、床の汚れがあります。土足を採用する場合は、日々の清掃だけでは、きれいな状態を保ち続けることは難しく、きれいさを維持するには、プロの清掃業者にメンテナンスを依頼する必要があります。床材の色や材質にもよりますが、3ヵ月~1年に1回は必要でしょう。

2.キッズコーナー

キッズコーナー は必ずしも設置しなければならないものではありませんが、積極的に子どもを受け入れていきたいのであれば、必須といえます。医院戦略として、小児歯科に力を入れる歯科医院も増えており、地域性や患者層を踏まえ、判断するのがよいかと思います。
現在では、コロナウイルス流行により、キッズスペースを利用停止にしている歯科医院がほとんどです。

3.トイレ・水廻り

患者さんが利用するトイレ・水廻りも、重要なポイントです。
ホスピタリティ業界では、お店を選ぶ要素として、サービスや雰囲気だけではなく、トイレの綺麗さが挙げられます。トイレが汚いという理由だけで、どんなにサービスがよくても、選択肢から除外されてしまうこともあるそうです。とくに女性の患者様は、その傾向が高いです。
トイレは清潔を第一に考え、かつ清掃しやすい仕様とするのがポイントです。基本的には白基調のデザインが多いですが、あえて汚れが目立ちにくいようなデザインにする場合もあります。また、トイレ備品などの収納場所もお忘れなく。トイレ内のデッドスペースを有効利用した収納を設計してもらうとよいでしょう。
清潔な状態を維持するために、スタッフによる定期チェックも重要なポイントといえます。


トイレ以外では、洗口コーナー、パウダールームがあります。
洗口コーナーは、トイレ同様、清潔な状態を保つことが大切です。アメニティグッズを設置する場合、置くだけでなく、きちんと整理整頓が必要です。
女性患者の獲得を目指すのであれば、パウダールームの設置はお勧めです。女性にとってはうれしい設備ですが、設置には余分な面積を必要とするため、他フロアの設計とのバランス(収益性)を考えなければなりません。

4.受付

受付は、待合室の項でも述べましたが、医院の顔ともいえる重要な場所です。
したがって、受付はインパクトのあるデザインにし、患者様に歯科医院を覚えてもらいたいと考えるかたもいらっしゃいます。しかし、受付と待合室は同じ空間に配置されることがほとんどでなので、受付だけインパクトがあるようなデザインをすると、全体的に調和がとれないイメージになってしまいます。重要なのは、医院全体のコンセプトをきちんと表現することが重要です。
また受付は、お会計や電話対応など、様々な業務が集中する場所でもあります。業務が集中するということは、事務機器も多く設置されるということです。作業がしやすいスペースを確保することが重要です。

5. カルテ収納場所

カルテの収納場所は、機能性や動線を考えると、受付内に棚を設けるのが一般的です。
ただし、受付は患者様の視線が集中する場所でもありますので、きちんと整理整頓している状況を保っている必要があります。 カルテは個人情報であり、保健所の所轄によっては、鍵付きのカルテ保管棚を準備するように指導されるケースもあります。

カルテの保管期間について
歯科医師には、5年間のカルテ保管義務が課せられています。
歯科医師法23条
1.歯科医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2.前項の診療録であって、病院又は診療所に勤務する歯科医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その歯科医師において、5年間これを保存しなければならない。
起算日は、最後の診療日と考えられています。
本規定は、あくまで保管義務期間を定めたものであって、最終診療日から5年を超えたカルテの保管について、歯科医師法上の規定はありません。
しかしながら、歯科医療過誤訴訟の時効期間が原則として10年であるため、10年間はカルテ等の保管をお勧めいたします。特に自費治療を行った患者様のカルテは、廃棄せず保管しておくことを推奨します。
そうなりますと、非常に多くの収納場所を確保しなければなりませんので、開業時に将来のことを見据え、カルテ保管庫を設計させる先生も多いです。

6. 診察室

歯科医師のメインステージが診察室です。診察室のデザインは、歯科医院のコンセプトに直結した仕様になるといえるでしょう。
例えば、自費治療を主体とした診療を行う歯科医院の場合、カウンセリングや治療計画の説明など、時間をかけてじっくりと行うことで、成約率をあげる要素だといえます。そのため、個室タイプの診療室を設けることが必須になります。
個室タイプのメリットを挙げると、プライバシーが確保されるので、患者側では①相談がしやすい、②安心して治療を受けることができる、③非個室に比べ、飛沫感染などのリスクが少ない、歯科医師側では、治療に集中できるということでしょうか。デメリットは、非個室に比べ、コストが高くなる、遮蔽性による作業効率の低下、人件費増が挙げられます。

保険診療を主体とした診療を行う歯科医院では、診療の効率性を重視したほうが、経営としては安定しやすくなります。したがって、非個室タイプの診療室、多くはパーテーションで仕切る構造を選択されるのが一般的です。
非個室タイプのメリットは、歯科医師・歯科医院側に還元される項目が多いです。
メリットは、①開業時、個室タイプよりもコストを抑えた設計ができる、②個室タイプよりも視認性が高いので、動線や作業効率がUPしやすい、そのため個室タイプの医院よりも少ない人員で経営することができる、などが挙げられます。デメリットは、個室タイプのメリットの真逆になります。(プライバシーが確保しづらい、飛沫感染のリスクなど)

個室と非個室の選択は、歯科医院の収益に直結する重要な要素といえますので、歯科医院の診療方針やコンセプトと照らし合わせ、じっくりと検討されることをお勧めいたします。

もう一つの検討は、将来のユニット増設台数の設定です。
開業当初は初期費用を抑えるため、ユニット台数を抑えて開業する歯科医院も多いです。
経営も安定し、いざユニット増設をしようとしたときに、スムーズに対応できるよう、レイアウトや配管の準備にも配慮しておく必要があります。

7.レントゲン室

レントゲン室は、歯科医院にとって必須の設備です。
最近では、開業当初からCTを導入する歯科医院も増えてきていますが、開業当初は設備の費用を抑えたいので、将来的にCTやセファロを導入しようと考えている方も多いと思います。
そこで重要なのは、開業時に設計するレントゲン室の広さです。レントゲン室の設計が開業時の設備に合わせたサイズで設計されている場合、いざCTやセファロを導入したいと考えた時には、レントゲン室の拡張工事を伴う可能性もあります。したがって、レントゲン室の設計は、将来的な設備入れ替えを見据えた設計が必要です。

8.消毒室

消毒室は診療で使用する全ての器材の洗浄、消毒、滅菌を行う場所で、歯科助手や歯科衛生士が、頻繁に使用するゾーンです。したがって、機能性や作業性を考慮したデザイン、レイアウトが望ましい。また院内での感染対策の為、消毒室内を汚染区域、洗浄区域、既滅菌区域にきちんとゾーニングすることが重要です。

9.技工室

技工に関しての考え方は、内製か外注かによって大きく変わります。
内製の場合のメリットは、やはりスピーディーな対応が可能になることでしょう。
一般的な歯科医院では院内に技工室を作ることは少なく、患者さんをより多く受け入れるためにチェアスペースを広く設計し、技工物調整はチェアサイドのみで済ませることが多い傾向にあります。そのため、最近では、歯科技工物は外部委託する歯科医院が多くなっています。
診療所に院内技工室を設置する場合、院内のみの使用目的に限るのであれば、基本的に届出などは不要です。所轄保健所によっては、設備のチェックを受ける場合もありますので、確認をお勧めいたします。医療法施行規則第16条第十三号には「歯科技工室には,防塵設備その他の必要な設備を設けること」と記されています。具体的には防塵設備の他に技工台、モデルトリマー、レジン重合器、鋳造器、技工用エンジン等が設けられているかの確認が必要となっています。

10. カウンセリングルーム

近年、カウンセリングルームを設ける医院が 増えています。カウンセリングルームの設置有無で自費売上が大きく変わるとまでいわれており、自費率アップの必須アイテムとまでいわれています。

11. 院長室、スタッフルーム

院長室は、日々の院長業務だけでなく、スタッフとの面談や、つかの間の休憩をとる場所として利用されることでしょう。したがって、あまりにも狭すぎる設計をした場合、有効に活用できなくなる可能性があります。
スタッフルームも同様です。退職を検討する原因として、スタッフルームが狭すぎて、ゆっくり休憩ができないということが挙げられるようです。
これらは診療室のように、歯科医院の収益に直結するようなゾーンではありませんが、スタッフの働きやすさや従業員満足度に直結する部分でもありますので、よくご検討ください。

12.従業員用トイレ

従業員用トイレは、必ず設置すべきだと考えます。ほとんどの歯科医院のスタッフが、患者様とトイレで鉢合わせになるのは、気まずいと感じるようです。

13. 機械室

機械室は歯科医院を開業するにあたって必須です。機械室にはコンプレッサーやバキュームを設置します。将来的にユニットを追加する場合、追加台数によっては、機械室の機器を容量の大きなものに入れ替えをしなければなりません。こちらもレントゲン室と同様、将来の設備導入計画を考慮した設計が必要です。

設計が完了すると設計図が完成します。その設計図をもとに施工業者に見積依頼し、工事を行っていきます。

歯科開業の教科書
編集部

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歯科開業の教科書 運営事務局

歯科医院の開業と運営に携わる現場コンサルタントが歯科開業に関する「旬」な情報を現場目線でお届けします。

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