歯科医院開業の向き・不向き
2021.04.18

同じ歯科医師という働き方にも、開業医と勤務医には大きな違いがあります。たとえば収入や勤務時間、そして業務内容など。仕事をある程度以上自分の自由にできることは開業医の魅力ですが、開業とは事業を行うことであり、そして事業のスタートアップはひとつの過程でしかありません。現実的な難所があり、継続的な努力やセンスなども必要となります。
目次
開業医向き?勤務医向き?大きな3つの違いを確認
歯科医師として働くにあたり、多くは、最初は勤務医でしょう。大学附属病院や街の歯科医院などの規模の差はあれ、勤務医となり、歯科医師として基本的な技量を身につけます。そして経験を積んでくると開業を考えるようになる。これが一般的な道順でしょう。
勤務医を続けるか。開業の道を選ぶか。
そのとき間違いなく頭の中に浮かぶ根本的な疑問は、「はたして自分は開業医向きなのだろうか?」というものです。歯科医師以外の仕事を例に考えるなら、「サラリーマン向きか、自営業者向けか」。この疑問には、次の3つのポイントから吟味しなければなりません。
1.「収入の安定度」は勤務医か
勤務医はある程度の収入が約束された仕事です。現今、勤務医の年収は400万円~800万円が相場で、平均は650万円程度だといわれます。この数値は比較的安定したものだとされ、また年齢・経験を重ねるにつれて高い水準で安定します。
対して、現今、歯科医院の開業医の年収は平均500万円~750万円だといわれます。これは平均的な数字ではなく、公開されている情報においてよく見られる値で、現実には大幅な上下が考えられます。うまく自由診療なども取り入れ、ターゲットを絞って経営している歯科医院の院長ならば年収2000万円を超えることもあるでしょう。ただ旧来の「町の歯医者さん」という規模で、実家の歯科医院を継いだだけでは、年収500万円以下もありえます。
2.「労働時間」は開業医の方がハードか
勤務医は就業時間に縛られることになります。週に40時間程度。最近は夜間歯科の需要も高くなっているので、病院の方針によっては、あるいは不規則な生活を強いられることもあるかもしれません。ただし福利厚生には恵まれ、有給休暇なども活用できるでしょう。
開業医は働く時間を自分で決めることになります。一般に人々が来院しやすい時間帯に開くことが社会的な義務で、あとは自由といえるでしょう。診療時間をパタッと切って、一切残業なしという働き方も可能です。
ただし、開業医は診療だけでなく、事務処理なども自分の仕事です。現実問題は、「診療時間以外は、すべて自由」「休みの日は全面的に休み」と、簡単にはならないでしょう。
3.「仕事の内容」は開業医が自由か
肝心の仕事内容はどうでしょうか? この違いも大同小異かもしれません。勤務医の場合はその歯科医院の方針により、各人の仕事の領分が決められることになります。
その点、開業医はある程度は自由にできますが、当然のことながら患者心理を考えると、どんな歯科医院でも「普通の歯の治療はしてくれるだろう」という見方があります。自由診療をメインに売り上げを作りたい場合でも、やはり歯科医師としての社会的な義務は考え、一般歯科の範囲内には対応しなければならないでしょう。
とはいえ、開業医は自院の色・コンセプトを自由に設定し、それをアピールして一般歯科の範囲外の仕事を土台とすることも可能です。たとえば予約優先制、完全予約制とすれば、あるところまで来院者層を絞り込むことができるでしょう。そして年々注目の集まる審美歯科として市場に参入し、最新の詰め物の素材にどんな価格を設定しようと、それに関心を持つ層がいるならば、事業として成立します。
安定度は勤務医 けれど開業向きの歯科医師も確実にいる
仕事そのものの安定度でいえば、勤務医の方が安定しているといえるでしょう。
しかし、自らお店を切り盛りするような開業そのものに興味がある人や、歯科医師として特定の分野に精通している人は、開業医の適正があります。今の新事業者は、何事も既成の要素に「プラスワン」ができるかどうかが、成否を分けるといわれます。それは歯科業界でも変わりません。
たとえば、これから開業しようと思って自分の周囲を見渡したときに、「この5km圏内には朝7時から開いている歯科医院はない」という視点を持つことができる方は、隠れたニーズを見つけ出し、社会貢献もできる歯科医院をスタートさせられるかもしれません。
人生のステージにおいて「開業しやすいタイミング」もあるでしょう。たとえば大学病院で基礎・応用を積んで30代となり、結婚することになった。その相手が同業者である。これはひとつの機です。ただ、こうした開業の好適機は誰もに平等に訪れるとは限りません。
「自分に歯科医師としての開業の適正があるのだろうか」「今が開業のタイミングなのだろうか」と自ら問うばかりでは決断できません。いずれにせよ開業時には、設備導入などをサポートしてくれる専門業者の力が必要となります。後々のことまで考えるならば、早くからそのようなパートナーとの関係を築いておき、自分が開業医向けか、勤務医向けか、また開業のタイミングはいつか、などと率直に外からの意見を聞くことも重要です。そのようなコミュニケーション能力も、むろん開業医に求められる力のひとつといえます。
逆にいえば、そういった一連の開業までの大きな流れを自分のイメージの中だけで完結させ、いざやろうと思ったときに現実的な手立てや人脈が何もない。そういったタイプの勤務医は、少なくとも、そのタイミングでの独力での開業は控えるべきではないでしょうか。
歯科開業の教科書
編集部
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歯科開業の教科書 運営事務局
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