労働環境の整備

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人材・リクルーティング

せっかくスタッフを採用したのに、後々トラブルに発展してしまわないように、知っておいた方が良いこと、整備しておくべきことを紹介します。

労働時間について

法定の労働時間、休憩、休日の制度について説明します。
労働時間は、原則1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。定めた時間を超える労働は残業になります。残業は、25%の割増賃金の支払いが必要です。
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
休日は、少なくとも毎週1日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。

労働時間とは、シフトで決められた時間ではありません。歯科医院の指揮命令下にある時間すべてが労働時間です。したがって診療時間はもちろん、準備や片付け、スタッフミーティングや掃除、訪問診療の移動時間もすべて、歯科医院の運営にかかわる業務は、すべて労働時間です。

雇用契約について

採用するスタッフが決定したら、次は雇用契約を締結します。
雇用契約とは、雇用主(歯科医院)と雇用される労働者の間で結ぶ契約のことです。労働者が、従業員として歯科医院に労務を提供することを約束すると同時に、雇用主がその労働の対価として賃金を支払うことを約束する契約です。

新たな従業員を採用する際に、雇用主が従業員に対して作成・交付する書類として「労働条件通知書」と「雇用契約書」の2種類があります。
雇用契約書とは、民法第623条に基づいて雇用主と労働者の間で交わされる書面で、雇用主と労働者が労働条件について「互いに合意したこと」を証明するための書類です。
雇用契約書に記載されている内容は、労働契約の期間や就業場所、賃金などに関する事項です。雇用契約書は法律上、書面での交付が義務付けられておらず、発行されていなくても契約自体は成立します。しかしながら、雇用後の労働条件に関するトラブルを避けるため、作成しておくのが一般的です。

労働条件通知書とは、雇用契約書とほぼ同じで、労働契約の期間や賃金といった労働条件に係る事項を記載した書類のことです。労働基準法第15条では、雇用主が労働者を雇用する際、労働者に対して労働条件を明示することを義務づけています。
労働条件通知書の中で明示しなければならない項目には、労働基準法第15条に規定されている「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」の2つがあります。「絶対的明示事項」は、口頭説明だけでは認められず、必ず書面で交付しなければなりません。一方「相対的明示事項」は、該当する項目があれば明示する必要のある項目です。口頭でも構わないとされていますが、トラブル防止の観点から書面化しておくのが望ましいでしょう。雇用主が労働者を雇い入れる際は、必ず労働条件通知書を作成・交付する必要があります。非常勤スタッフの採用の場合でも、同様です。

「絶対的明示事項」の内容

必要な記載事項
①労働契約の期間
※有期契約労働者の場合、契約期間終了後の契約更新の基準に関する内容も記載
②就業場所
③従事すべき業務の内容
④始業・終業の時刻
⑤所定労働時間を超える労働の有無
⑥休憩時間、休日、休暇
⑦労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
⑧賃金の決定、計算及び支払いの方法
⑨賃金の締め切り及び支払いの時期
⑩昇給(書面による明示は不要)
⑪退職に関する事項(解雇事由を含む)

「相対的明示事項」の内容

トラブル防止のために記載しておいた方がよい内容
①退職手当の定めが適用される労働者の範囲
②退職手当の決定・計算・支払い方法、支払時期
③臨時に支払われる賃金、賞与、各種手当てならびに最低賃金額に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰及び制裁に関する事項
⑧休職に関する事項

また、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対しては、以上の項目に加えて、以下4つの事項の記載が義務づけられています。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

雇用契約書を交わしていない場合ですが、罰則規定はありません。
しかし、労働条件通知書を交付していない場合は30万円以下の罰金が課されることがあります。また、交付される契約書の労働条件の内容が労働基準法に違反している場合も罰則の対象になります。

労働条件通知書の「絶対的明示事項」は、これまで紙媒体での交付に限られていました。しかし、労働基準法施行規則の改正にともない、2019年4月1日よりFAXやメール、SNS等を使った労働条件の明示も可能になりました。ただし、紙以外の媒体で労働条件を明示するには、以下2つの条件を満たしている必要があります。
①労働者がFAXやメール、SNS等での労働条件明示を希望した場合
②出力して書面を作成できるもの
労働者が希望していないのに紙以外の手段で労働条件を明示すると、労働基準関係法令の違反となり、最高で30万円以下の罰金となることもあります。

労働条件通知書と雇用契約書をまとめた、「労働条件通知書兼雇用契約書」を発行しているところもあります。

就業規則

就業規則は、いわば会社の決まり事、ルールです。
労働時間や休日、賃金の支払い、スタッフの待遇などを定めるだけでなく、雇用主と労働者でトラブルが生じないようにするためにも非常に大切なものです。

労働基準法では、スタッフが10人以上所属している場合、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出る必要があります。言い換えれば、スタッフの所属人数が10人未満であれば、就業規則の届け出は必要がありません。開業当初から、スタッフの所属人数が10名以上になるケースは稀だと思いますので、就業規則を作らなくてもよいことになります。
しかし後々のトラブルを防ぐためにも、就業規則は作成しておいた方が良いです。
例えば、解雇などの懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則で懲戒事由を定めておく必要があります。言い換えれば、懲戒事由を定めていなければ懲戒処分ができないということです。
開業時に最低限必要な規程として挙げるのであれば、正社員就業規則・契約社員就業規則・パートタイマー就業規則(非常勤用)・賃金規程・育児介護休業規程などでしょうか。
歯科医院は女性スタッフがほとんどですので、女性に対する規定をきちんと整備しておくことが、スタッフの定着率にもつながると思います。

歯科開業の教科書
編集部

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歯科開業の教科書 運営事務局

歯科医院の開業と運営に携わる現場コンサルタントが歯科開業に関する「旬」な情報を現場目線でお届けします。

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